包丁を握りしめ、はじめて本気で人をあやめてしまおうと思ったときの話
遅くなりました。
主人は私の用意した食事を何の感想も言わずに平らげて、すぐにお風呂に入り、そそくさと自室に入ってしまいました。
帰宅してから発した言葉は「なんだ魚か」それだけです。案の定あの人は肉でも食べたかったのでしょうね。それなら先に連絡でもしてくれば少しは可愛げがあるのに。
昼間少し書いた、私が唯一義理の姉のむつみと、取っ組み合いの喧嘩になったときの話を吐き出させてください。
少し気分の悪い話になるかも知れませんので・・・読みたくない方はここで引き返してください。
その日私は娘の小学校の保護者会でした。
保護者会のあとに、保護者同士の会議のようなものがあり(運動会の係決めのようなもの)帰りは夕方になると主人に伝えていました。
息子はまだ小さくて、娘も小学生中学年くらい。主人が帰ってくるまでは義理の母と、その当時はまだ仕事をしていて今よりも忙しくしていたむつみが家にきて子供の相手をしていてくれるという話になっていました。
当時から義理の母のきつさは身にしみてわかっていましたし、心から安心してお任せできる状況ではなかったのですが、主人も早く帰ってくると言っていましたし、私もそこかで遅くなるわけではなかったので、預けると言ってもほんの数時間。まあ大丈夫だろうと案外軽い気持ちでいました。
保護者会と会議が終わり、家に帰り着いたのは18時をまわっていたと記憶しています。予定よりも30分ほど遅くなってしまい、食事の準備もしなければいけないと慌てて帰宅しました。
部屋に入るといつも通りテレビを見ている主人、すぐそばに幼い息子がいて、義理の母とむつみはお茶を飲みながら談笑しています。
あれ?娘は?
たまたまトイレに言ったタイミングなのか、自分の部屋に何かを取りにいったのかとも思ったのですが・・・どうやらそういう雰囲気ではありません。
あの人たちは私が帰宅しても、まるで空気のような扱いなので娘を探すことにしました。トイレをのぞいてもいません。私の寝室をのぞいてもいません。娘の部屋を探してもいません。でも玄関に靴があります。
どこへいったの?
本当に神隠しにでもあってしまったのかと思うほど、どこにもいなくて気配もないので・・・心配になってしまい、ついにリビングにいる旦那に向けて、娘はどこにいるの?と訪ねてしまいました。
すると、むつみが変わりに「まだお風呂場にいるのかねぇ」とひとこと。
まだお風呂場?
一緒にお風呂に入るような時間でもないですし、なんのことだろうと思って浴室に向かってみましたが電気はついていません。電気をつけて中をのぞいてみると・・・
大切に長くのばしていた髪の毛が、ばっさりと切られておかっぱ頭になった状態で泣いている娘がそこにいました。地面には切り刻まれた毛が散らばっています。
一瞬なにが起こったのかわからず、どうしたの?なにがあったの?と娘を抱きしめながら聞いてみると、おばさんが髪の毛を切っちゃったの。と娘がようやく声をしぼりだしました。
腰のあたりまで伸ばしていた髪の毛。本人が長い方がいいと、大切に毎日とかしていたんですよ。その髪の毛をなぜ急に素人のむつみがばっさりと切るのか。意味も意図もわからずに、すぐにリビングに戻って彼女に聞きました。
娘の髪の毛、どうして切ったんですか?本人が泣いています。何があったのか説明してください。
興奮気味でしたし、ほとんど泣いたような状態でむつみに聞くと、彼女は「ながくて鬱陶しいから私が工作用のはさみで切ったのよ。なかなか上手でしょ?」と笑っていいました。
そのときに、私の頭の中で何かがプチンと切れたような音がした気がして、気がついたら台所の包丁を持って叫んでいました。
ふざけないで!取り返しのつかないことをして!あんなに幼い娘がずっとないてるじゃない!
そんなようなことを叫んでいたと思います。あまり記憶が確かではなく、興奮と怒りと色々な感情が混ざってしまい、わけがわからなくなっていたんだと思います。
包丁でどうにかしようとか、そういう感情はなかったのでしょうけれど、きっとこれくらいの武器がないとあの人たちには立ち向かえないと本能的にそう思っていたのかも知れませんね。
その直後に背後から飛んできた主人の平手打ちで私は地面に倒れ込み、包丁もとりあげられました。
その後、義理の母と主人から散々叱られ、罵られ、身も心もボロボロになった私と、大切な長髪を失って呆然とする娘だけがリビングに残されました。
何事もなかったように部屋を汚したまま帰路についた主人の親族と、それを平然と送る主人の行動がどうしても理解できず。
怒りの感情が大きくなりすぎてはじめて理性を失いそうになりました。
このままだと自分が何をしてしまうかわからず、自分自身が怖いと感じたのははじめてです。うまく言葉で言いあらわせないのですが、自分の思考の部分と、感情と、行動が全部バラバラになってしまったような。
コントロールできない状態になって、自分のことなのに何をしてしまうか想像もつかないような・・・そんな恐怖がありました。
娘はしばらく落ち込んでしまい、学校へも行かない日々が続きました。
ショックで話せなくなってしまったのもこの時期で、言葉を発することが一切できなくなりました。病院に行ってもすぐになおせるような問題ではなかったので、治療には相当な時間と労力を使いました。私も娘も。
そんな過去もあったので、娘はむつみのこと嫌っています。嫌っているというよりは憎んでいると言った方が正しいかも知れません。
私も人生ではじめてあそこまで人を憎いと思いましたし、突発的な行動であんなことをしたのも最初で最後でした。
あの人はもしかしたら、もう娘の髪の毛を自分が無造作にばっさりと切ってしまったことを覚えていないかも知れません。美容師の経験もないくせに、なぜでしゃばったのか・・・今思えば、あれも存在自体が気に入らない私への嫌がらせのひとつだったのかも知れません。
それを気にもとめない義理の母、平然としているむつみ、自分の娘のことなのに止めもせず、心配もしない主人。やっぱりあの家族は異常です。どうかしてます。
いままでこの話を誰かに話すことはありませんでした。自分の中にためこんでいました。ここで今こうして吐き出すことができて、少しだけ気が楽になったような気がします。
いつか、主人やその親族にきっとバチが当たります。人生とはつじつまの合うものと聞いたことがありますので、きっと今までの素行を神様が許しません。
今でこそ明るく元気に結婚生活と子育てを楽しんでいる娘ですが、そんな辛い過去があり、私は彼女を守ってあげることができませんでした。後悔しています。本当に悔やんでも悔やみきれない過去です。
今後の人生で、あのときの分も含めて娘と孫に幸せを届けたいです。私の手で。
憎いあの人たちのことを思い出したり、辛すぎる過去の日々を思い出さなくてもいいような、そんな幸せな日々を絶対に手にいれてみせます。